期間工として赴任することになり、社員寮へ入る場合、住民票は移すべきか、それとも移さなくて大丈夫なのか、どちらなんでしょうか?
【住所が変わったら住民票を移す】
これが原則です。
したがって、一定期間とはいえ、寮に入るのであれば住民票は移すことをおすすめします。
ただし、以下の場合は、住民票を移さなくても大丈夫です。
《住民票を移さなくて良いケース》
- 3〜6ヶ月の短期で働く場合
- 住民票が実家にあり、退職後に戻る場合
- 持ち家があり、退職後に戻る場合
- 賃貸契約をそのままの状態にしておく場合
このようなケースでは、法律上も「住民票を移さなくても良い」となっています。
正直なところ、住民票は移さなくても大きな問題にはなりません。
ただ、移さないと色々と面倒なことも多いので、そのことはしっかり理解しておいてほうが良いです。
そこで今回は、期間工で赴任する際に住民票をどうするべきか、できるだけ分かりやすく解説したいと思います。
「引っ越したら住民票は移す」これが原則
そもそも、住民票とは何かご存じですか?
法律上でも、「引っ越したら14日以内に住所変更を届け出ること」となっています。
しかし、住民票を住所変更しないと、たとえば「東京に住んでいるのに住民票は地元の九州に残ったまま」という状況になってしまいますよね。
ですから、引っ越したら住民票は移すのが原則です。
寮に入るとき住民票は移す?移さない?
ただし、以下2つのケースでは住民票を移す必要はありません。
- 新しい住所地で暮らすのが1年未満の場合
- 生活の本拠地が実家(あるいは持ち家、賃貸)などにある場合
具体的には、以下のようなケースです。
《住民票を移さなくて良いケース》
- 期間工で短期(1年未満)で働く場合
- 期間工を辞めたら実家に戻る場合
- いま住んでいる賃貸アパートを借りたままで寮に入る場合
- 持ち家があり、単身赴任で寮に入る場合
このようなケースでは、「期間が短い」もしくは「生活の本拠地が変わらない」という理由から、住民票は移さなくても良いことになっています。
これが、住民票における基本的なルールです。
一方、以下のようなケースでは、住民票を移す必要があります。
《住民票を移すケース》
- 期間工で長期で働くつもりの場合
- アパートを解約して寮に入る場合
- 期間工を辞めたあとに実家あるいは持ち家に戻らない場合
いま住んでいる家(賃貸、実家、持ち家)にもう戻らない場合は、住民票を「寮の住所地」に移すようにしてください。
住民票を移さないと「住所不定」になる可能性もある
自分が契約しているアパートや実家または持ち家に住民票の残しておくのはOKです。
しかし、アパートを解約したにも関わらず、住民票をそのままにしておくのは問題があります。
実際は住んでいないのに、住民票が残っている状態になるからです。
この場合、「職権削除」になってしまう可能性があります。
職権削除とは、住んでいるはずの人がそこに住んでいないと判断され、役所が住民登録を削除することです。
こうなると「住所不定」になってしまい、状況はさらにややこしくなります。
したがって、住民票を残しておけるような家がない場合は、住民票を社員寮へ必ず移しましょう。
ここまでで、住民票を移すべきか移さずにそのままで大丈夫か理解できたでしょうか?
住民票を移さないデメリット
住民票のことは誰かが教えてくれるわけではないので、そのまま放置してしまうケースも少なくありません。
しかし住民票を移さないと、以下のように色々とややこしいことも多いので、その点は理解しておきましょう。
《住民票を移さないデメリット》
- 免許更新がめんどくさい
- 住民票や印鑑証明などの公的書類が最寄りの役所で取得できない
- 図書館やスポーツセンターなどの公共施設を利用できない、あるいは割引が利かない
- 健康診断、がん検診などが受けられない
- 赴任先では選挙に参加できない
- クレジットカードやキャッシュカード、開設口座に関する書類などが受け取れない
- 住民票のある地域でしか確定申告できない
以下で、それぞれ詳しく説明します。
免許更新がめんどくさい
近々、運転免許の更新がある方は注意してください。
というのも、免許の更新は「住民票のある地域」でしか手続きができないからです。
たとえば「九州→愛知」のように遠くへ赴任した場合、免許を更新するためだけに九州まで帰らなくてはいけません。
高額な旅費が必要になるのはもちろんのこと、休みも取ることになります。
しかし、住民票を寮に移しておけば、そこの管轄の免許センターで更新ができます。
したがって、「免許の更新が近づいている」かつ「遠方に赴任する」という方は、住民票を移しておいたほうが良いです。
住民票や印鑑証明などの公的書類が最寄りの役所で取得できない
さまざまな手続きや契約で、住民票や印鑑証明などが必要になることがあります。
ただ、そのような公的書類は「住民票のある地域の役所」でしかもらえません。
ということは、住民票を移していないと、そのような公的書類が必要になっても近くの役所では交付されません。
その場合、「住民票のある地域の役所」に行って手続きが必要になります。
書類を手に入れるために、わざわざ以前住んでいたところに行くのは面倒ですよね。
図書館やスポーツセンターなどの公共施設を利用できない、あるいは割引が利かない
図書館やスポーツセンターなど、その地域の公共施設は「市民税」で運営されています。
したがって、住民票をその地域に移していない方、つまり市民税を払っていない方は、公共施設を利用できないケースがあります。
たとえば、図書館の本が有料になったり、スポーツセンターの利用料に割引が利かなかったりします。
公共施設を良く使う方には金銭的なデメリットになるでしょう。
健康診断、がん検診などが受けられない
ある年齢になると、自治体から健康診断の案内ハガキが送られてきます。
どの地域でも、住民票のあるところでは健診を受けられるようになっています。
ただ住民票を移さないと、当然ながら、その権利はありません。
もちろん住民票のある地域に戻れば健診は受けられますが、わざわざそのためだけに帰らないですよね。
したがって、健診を受けられないのも住民票を移さないデメリットになります。
赴任先では選挙に参加できない
また、選挙権もなくなります。
(正確には「赴任先」での選挙権)
というのも、やはり選挙権も住民票のあるところで得られる権利だからです。
たとえば「九州→愛知」に赴任した場合、住民票を移さないと愛知では選挙に参加できません。九州では選挙権がありますが、選挙のためだけに帰らないですよね。
したがって、住民票を移さないと、選挙に参加できないか、あるいは参加しにくくなります。
クレジットカードやキャッシュカード、開設口座に関する書類などが受け取れない
住民票を移さないと、クレジットカードやキャッシュカード、口座開設に関する書類などが受け取れないのも厄介です。
たとえば、クレジットカードを発行するときに身分証明書(免許証など)が必要になりますが、そこに書かれている住所にカードが届きます。
つまり、住民票のある住所です。
住民票が実家(あるいは持ち家)にあれば家族がクレジットカードを受け取れると思うかもしれませんが、そのような重要書類は「本人」しか受け取れないようになっています。
受け取りには期限があるので、その間に家へ戻り、あなた自身がクレジットカードを受け取らなくてはいけません。
銀行のキャッシュカードやネット口座に関する書類などを受け取るときも同様です。
住民票のある地域でしか確定申告できない
期間工の給料以外に、副業や投資などで利益がある方は「確定申告」が必要です。
実は、確定申告も「住民票のある地域」でしかできません。
したがって、申告時期になったら「住民票のある地域」に戻って税務署に行き、そこで必要書類を出さなければいけません。
これも面倒ですよね。
このように、住民票を移さないと面倒なことや不都合なことがいっぱいあります。
そもそも「住んでいるはずのところ」に住んでいないのですから、当然と言えるかもしれません。
期間工生活が短ければ不都合は少ないでしょうが、長期になれば不便なことが次々と起こります。
期間工で1年以上働くつもりの方は、住民票を移した方が何かと面倒がないと思います。
期間工で働くのが短期なら住民票を移さないのもあり
もちろん短期あれば住民票を移さずにそのままにしておくのもOKですが、その場合、住民票を置いておく「住まい」は必要になります。
〈実家〉
期間工で働く間だけ実家を出る場合は、住民票をそのまま移さなくても問題ありません。
あるいは一人暮らしの方でも実家にちょくちょく帰るのであれば、一旦、住民票を実家に移すこともできます。
〈持ち家〉
すでに持ち家があり、期間工で働く間だけ単身赴任という形で寮に入る場合は、もちろん住民票をそのまま残しておいてOKです。
〈いま住んでいる賃貸アパート〉
期間工で働く数ヶ月、アパートを解約せずにそのまま借りた状態にしておく方もいるかもしれません。
この場合も、住民票はそのアパートに残したままで大丈夫です。
ただし、その間の家賃は発生し続けます。
このように、いずれ戻る家がある場合は、その家に住民票を残しておくこともできます。
しかしながら、前項でもお伝えしたように、住民票を移さないと何かと不便な思いをすることもあります。
ですから、本拠地となる住まいがあっても、期間工で長く働く場合は、一旦、住民票を寮に移すことをおすすめします。
住民票「異動手続き」の流れと必要書類
それでは、住民票を移す手続きについて説明します。
住民票を移すには、「転出届」と「転入届」の2回の手続きが必要です。
◆1回目の手続き
転出届(「ここを出ますよ〜」ということを申請する手続き)
場所 | 旧住所地の市区役所 |
---|---|
タイミング | 引越し前 |
必要書類 | 本人確認書類(運転免許証、健康保険証、パスポートなど) マイナンバー通知カードまたはマイナンバーカード 印鑑(認印可) 国民健康保険証(該当者のみ) |
◆2回目の手続き
転入届(「ここに引っ越してきましたよ〜」ということを申請する手続き)
場所 | 新住所地の市区役所 |
---|---|
タイミング | 引越し後 |
必要書類 | 転出証明書(転出届の際にもらえます) 本人確認書類(運転免許証、健康保険証、パスポートなど) マイナンバー通知カードまたはマイナンバーカード 印鑑(認印可) 年金手帳、国民健康保険証(該当者のみ) |
転出届と転入届の手続きはセットで行うことになるので、流れをざっくり理解しておきましょう。
- 転出届の申請(旧住所地の役所)
- 転出証明書をもらう
- 転入届の申請(新住所地の役所)
※転出届を申請すると「転出証明書」がもらえます。この書類がないと転入届の手続きはできないので注意しましょう。
必要な書類さえ用意すれば、手続きは難しくありません。
あとあと面倒な思いをしないためにも、できるだけ早めに済ませておきましょう。
住民票の住所変更は郵送でも可能
なお、引越し前に「転出届」の手続きを忘れてしまっても大丈夫です。
法律上は「引越しから14日以内」となっていますが、実は、手続きが遅れてしまっても住民票は移せるからです。
その場合は、赴任後に「郵送」で手続きをおこないましょう。
ちなみに、期間工をすぐに辞めてしまう可能性を考えると、仕事に慣れてから住民票を移すというのも選択肢だと思います。
住民票異動に伴うその他の手続き
住民票を移した場合、それ以外に次のような引越し手続きも必要になってきます。
- マイナンバーカード(通知カード)の住所変更
マイナンバーカードの住所は「住民票の住所」です。
役所で手続きする際にマイナンバーカードも一緒に出せば、同時に住所変更してもらえます。 - 運転免許証の住所変更
免許証は一番よく使う身分証明書なので、住所が変わったら免許証もすぐに書き換えましょう。
警察署に新しい住民票を持って行けば手続きできます。 - 郵便局での転居届
郵便局での転居届(郵便物を新居に転送してもらうための手続き)も重要です。
これをしておけば、旧住所に届く郵便物を新居に届けてもらえます。 - 銀行、クレジットカード、スマホなどの住所変更
これらの続きは必ずしも必要なわけではありませんが、必要に応じて住所変更を進めましょう。
引っ越しの際は何かと住所変更の手続きが必要ですが、そのまま放置しても後々面倒なことになるので早めに済ませておきましょう。
まとめ
今回は、期間工で寮に入る場合、住民票を移すべきかどうかを解説してきました。
原則、住むところが変わったら、それに伴い住民票も移す必要があります。
ただし、1年以内の短期や、生活の本拠地が変わらない場合は、住民票は移さなくても大丈夫です。
大事な手続きではありますが、実は寮に入ってからでも間に合うので、しばらく働いてから必要性に応じて住民票を移してもいいかと思います。